就労移行支援体制加算の見直し、何が問題だったのか?

お役立ち情報

はじめに

今回は基幹相談支援センターの業務内容から外れますが、制度の改正についてお話をしていこうと思います。

※注意:今回は就労継続支援B型事業所をメインに説明しています。

結論から述べると、就労移行支援体制加算をめぐる不正受給問題は、「再雇用の繰り返し」という制度の抜け穴を悪用した組織的な行為であり、2026年4月から算定人数に上限が設定されることになりました。基幹相談支援センターの相談員としても、地域の事業所を運営したり、そこで支援する立場にある皆さんにとっても、この制度改正の背景と内容を正確に理解しておくことは不可欠かなと思います。

今回は、何が問題となったのか、そして基幹相談支援センターの相談員として地域の事業所を見るときにどこに着目するのかを、具体的に解説します。

そもそも就労移行支援体制加算とは何か?

就労移行支援体制加算とは、就労継続支援B型事業所等において、利用者が一般就労に移行し、その後も就労が継続している場合に、事業所に対して加算として上乗せ報酬が支払われる仕組みです。

就労継続支援B型は、一般就労が難しい方が、雇用契約を結ばずに就労訓練を受ける場です。(最近は居場所作りとか、そもそもそれが訓練と言えるのか?と首を傾げたくなる事業所も乱立していますが・・。)その事業所から一般就労に結びつけた実績を評価する加算ですので、本来は「利用者の自立を支援した成果」に対して報酬が支払われるべきものです。

加算の算定は、前年度の就労移行者数に基づいて翌年度の報酬単価に反映される仕組みになっています。つまり、「昨年度に何人が一般就労に移行し、6か月以上継続できたか」が、当該年度の基本報酬に直接影響します。

何が不正受給の温床になったのか?

この加算の仕組みには、結果から見て長らく大きな抜け穴がありました。それが「再雇用の繰り返し」です。

具体的には、次のような手口が横行していました。

1. 事業所が、グループ企業や関連会社に利用者を一般就労として送り出す

2. しばらく経過したのちに解雇または退職扱いにする

3. 同じ利用者を再び就労継続支援B型に戻す

4. 再度、同じ企業に「就労移行」として送り出す

5. この繰り返しによって、就労移行実績のカウントを水増しする

この手口によって、ある事業者グループが合計20億円を超える就労移行支援体制加算を過大受給していたことが明らかになりました。同一の利用者を何度も「就労移行者」としてカウントすることで、実態とはかけ離れた加算算定人数を積み上げていたのです。この話を聞いたときは、本当によく考えるなぁと感心してしまいました。

制度上、「同一人物の再カウント禁止」が明文化されていなかったことが、この問題を生んだ直接の原因です。支援の成果を正当に評価するための仕組みが、悪用される余地を残していたことになります。

2026年4月からの制度改正、具体的に何が変わった?

2026年4月の施行に向けて、就労移行支援体制加算の算定ルールに上限が設定されました。

改正の核心は、「算定対象となる就労移行者数に上限(事業所の定員数)を設ける」という点です。これにより、極端に多くの就労移行実績を申告することができなくなります。また、同一利用者の再カウントを防ぐための要件整備も進められています。

この改正は、適正に支援を行っている事業所には大きな影響を与えないものです。しかし、実態を伴わない「数字の積み上げ」によって加算を得ていた事業所には、クリティカルにダメージを与えるものです。

基幹相談として地域事業所を見るとき、どこをチェックすべきか?

ここからは、我々が日常的に地域の就労継続支援B型事業所と関わる中で、チェックポイントとして意識している点をお伝えします。

① 就労移行実績の「数字」だけを信頼しない

多くの就労継続支援B型の事業所はHPに前年度の実績を載せていますがその報告書や「昨年度は〇〇人が一般就労しました」と話す内容に、その数字の背景を確認する姿勢を持つようにしています。幸い、私が活動している地域では事業所の利用者層と照らし合わせても、現実的と思われる数字となっているので、そこまで背景を確認しないで済んでいます。(正しく支援を行ってくれている事業者・支援者の方、ありがとうございます)

チェックすべき点は以下のとおりです。

・就労先が特定の企業・グループに集中していないか

・就労後6か月以上の継続状況を把握しているか

・利用者が短期間で事業所に戻ってきていないか

・就労移行後の定着支援を誰が担っているか

・事業所の利用者層から見て、現実的な数字となっているか(障害種別、障害の重さなど)

数字の大きさよりも、「一人ひとりの就労の実態」を把握しているかどうかが、巡り巡って適正な支援の証明や事業所への信頼に繋がります。

 ② 利用者の動向を縦断的に追う視点を持つ

同一の利用者が「就労→退職→B型利用→就労→退職……」というサイクルを繰り返している場合、それは本人にとってプラスになっているのかを考える必要があります。

もちろん、本人の意思による再利用は否定されるものではありません。しかし、事業所側の都合で繰り返しが起きている場合、それは利用者の自立支援ではなく、利用者を「加算取得のための素材」として扱っていることになります。「そんな支援者がいるのか」 と言いたいところですが、実際に起きた話です。

基幹相談支援センターが地域の個別ケースに関わる中で、このような不自然なサイクルに気づいたときは、丁寧に背景を確認することが求められます。

 ③ 事業所との関係性で「見て見ぬふり」をしない

基幹相談支援センターは、地域の相談支援体制の中核を担います。その役割上、地域の事業所と良好な連携関係を築くことは重要です。しかし、連携関係が「不正を見逃すための人間関係」になるのはNGです。

不正受給は、最終的には障害福祉サービス全体の信頼を損ない、適正に運営している事業所にも悪影響を与えます。実際に今回の改正で、真面目に支援を行い多くの就職者を出していた事業所にとっては、上限設定をされたことは迷惑でしかありません。地域の事業所を訪問したときに「何かおかしい」と感じたら、その感覚を大切にして同僚や上司に共有するようにしています。

また、市区町村や都道府県の指導監査部門(地域により部門名は変わる)への情報提供も、基幹相談支援センターの役割の一つとなっています。

④ 制度改正の情報を事業所と共有する

2026年4月の改正を、基幹相談支援センターとしても地域の事業所にも周知する取り組みも重要です。就労継続支援B型を運営している事業所は我がごとなので流石に把握しているとは思いますが、現場の支援者の方は全く知らないということも、少なくありません。現場レベルまで落とし込むことも、法律を遵守するために必要な取り組みです。

制度改正を「負担が増える話」ではなく、「本来の支援の質を問い直す機会」として捉えるよう、一緒に考える姿勢が我々には求められています。(責任重大だ・・。)

不正受給はなぜ繰り返されるのか?

この問題の根底には、「障害福祉サービスは、支援の質や実態ではなく、数字で評価されやすい構造になっている」という課題があります💦(分かりやすい例として、利用人数・利用時間・利用日数などがあげられます)

一般就労への移行人数も、わかりやすい成果指標である一方、その数字だけを追いすぎると、利用者一人ひとりの生活の質や本当の意味での自立とは乖離した支援につながるリスクがあります。

基幹相談支援センターとして地域の事業所を見るときには、数字の裏にある「支援の質」と「利用者の意思」を大切にする視点を忘れないことも意識しています。

まとめ

ここまでお話ししてきたことを、再度復習します。

就労移行支援体制加算の不正受給問題は、制度の抜け穴を利用した再雇用の繰り返しによって、20億円を超える過大受給が行われたという深刻な事案です。この問題を受け、2026年4月から算定人数に上限が設定されました。

この改正にあたり、基幹相談支援センターの相談員として求められているのは次の4点です。

1. 就労移行の「数字」だけで事業所を評価しない

2. 利用者の動向を縦断的に把握する

3. 不自然な実態に気づいたときに適切に動く

4. 制度改正の情報を地域の事業所と共有する

就労継続支援B型の本来の役割は、利用者が自分らしい形で社会に参加できるよう支援することです。その理念に立ち返り、地域の事業所と連携しながら、適正な障害福祉サービスの実現に貢献していきたいと思います。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました