この記事では、行政と基幹相談支援センターの関係について書いてみます。
この仕事をしていると、分かっていても時々考えることがあります。
「行政と基幹って、どういう関係なんだろう?」
基幹相談支援センターで働いている人でも、意外と説明するのが難しいところかもしれません。
「行政から委託されているんだから、行政の仕事をするところでしょ」という考え方もあります。
もう少し強い言い方になると、「基幹は行政の下請け」あるいは、「行政から地域に配置されている機関」という捉え方をされることもあります。(実際に本気でそのように考えているケースワーカーさんもいらっしゃいます)
確かに、そう見える部分はありますし、基幹相談支援センターの業務や役割は行政から示されることも多々あります。
でも、制度を確認してみると、単純にそう考えれば良いとは言い切れない面もあると思います。
今回はある政令指定都市の例も挙げながらこの点について考えていこうと思います。
先に結論
基幹相談支援センターと行政は、かなり密接な関係にあります。実際に行政から委託を受けて行っている業務もあります。
なので、「行政とは別なので、行政からの依頼は関係ありません」という話でもありません。
一方で、「行政から言われたことを地域で実行するのが基幹」というだけでもありません。
基幹には、地域の相談支援を支えたり、関係機関をつないだり、地域で起きている課題を拾って地域づくりにつなげたりする役割があります。
行政と基幹、どちらが上で、どちらが下なのか。そう考えるよりも、それぞれ違う立場から、同じ地域の相談支援を作っていく関係と考えた方が、しっくり来ると思います。
そもそも基幹相談支援センターとは?
障害者総合支援法では、基幹相談支援センターを、「地域における相談支援の中核的な役割を担う機関」としています。
業務も、個別相談だけではなく地域の相談支援専門員への相談・助言・指導その他の援助や、関係機関の連携を進めることなどが位置づけられています。(しかも年々追加されていくという・・・。)
厚生労働省の資料では、特に、「地域の相談支援従事者への支援」と、「自立支援協議会への関与を通じた地域づくり」が主要な「中核的な役割」と整理されています。
ここを見ると、基幹は単に行政から仕事を受けて処理するための機関ではないことが分かります。
でも、行政から委託されているのでは?
ここは、そのとおりです。基幹相談支援センターは市町村が設置することができますし、市町村から委託を受けた相談支援事業者などが設置することもできます。
参考に、市として日本最大の人口を誇る横浜市を見てみたところ、横浜市は「市から委託を受けて基幹相談支援センターの業務を行っている」ようで、横浜市自身も、基幹について「本市から委託を受けた機関」と説明しています。
これにより、「行政から委託されている」という点は間違いではありません。
問題はその先で、委託されている=行政の下請けという考え方が成立するのかということですが、筆者としては、この二つを分けて考えた方が良いと思っています。
「行政の配属機関」という捉え方について
もう一つ、現場では、「基幹は行政が地域に配置している機関」「行政側の機関」というような捉え方をされることがありますが、ここも少し整理が必要だと思います。
基幹相談支援センターには、市町村が直接設置する形と、市町村から委託を受けた事業者が設置する形があります。つまり、全国の基幹がすべて同じ運営形態ではありません。
先ほど例に挙げた横浜市では、基幹で働いている相談員は、行政から地域へ配属された行政職員ではありません。市から委託を受けた法人に所属する職員として、基幹相談支援センターの業務を担っています。
もちろん、市から委託を受けている以上、行政と無関係に仕事をするわけではありません。ただ、「行政から委託を受けて仕事をする」ことと、「行政組織の一部として仕事をする」ことは同じではありません。
この違いは、行政と基幹の関係を考えるうえで、かなり重要になると思っています。
行政から地域へ伝えるだけなのか?
行政から基幹へ情報が下りてきて、基幹から地域の相談支援事業所へ伝える。もちろん、こういう業務もあります。制度改正の情報だったり、グループホームの空き情報、研修のお知らせなど、地域で共有してほしいことだったり、色々とあります。
イメージすると、「行政 → 基幹 → 地域」という流れです。ただ、基幹の業務がこれだけになってしまうと、制度の趣旨からも外れます。
基幹は、地域の相談支援専門員や事業所とも自立支援協議会の活動や日々のやり取りの中で、日常的に関わります。この記事でも書きましたがそこで、「最近こういう相談が増えている」「この制度では対応しづらい」「この地域には、この社会資源が足りない」という話も出てきます。
それを聞いて終わりではなく、「これは一つの事業所だけの問題なのか?」と考える。同じような話がいくつもの事業所から出てくれば、それは地域の課題であると言えます。
地域から行政へ伝える(返す)ことも必要
ここが、基幹にしか出来ないことだと思っています。
地域で起きていることを拾って、自立支援協議会などで共有したり、関係機関と一緒に考える。必要であれば行政にも伝え、皆で「地域としてどうするか」を考えていく。
基幹には、自立支援協議会への関与を通じて関係機関の連携を進める役割も法律上位置づけられています。つまり、「行政 → 基幹 → 地域」だけではなく、「行政 ⇄ 基幹 ⇄ 地域」という流れも必要となってきます。
行政と基幹は「両輪」の関係
横浜市では、区役所、基幹相談支援センター、生活支援センターを、各区における相談支援の中核となる機関として位置づけているそうです。
そして、この3機関について横浜市は「両輪」の関係という表現を使っています。3機関なのに「両輪」とは、面白い表現です。(誰も突っ込まなかったのだろうか・・)
これは行政が上で基幹が下、という説明ではありません。それぞれの強みを生かして役割分担しながら、相談支援を進めていくという考え方です。
実際、行政だからできることがありますし、逆に、基幹だから見えることもあります。地域の相談支援事業所だから分かることもあります。
立場が違えば見える景色も違うので、一緒に考える意味が出てきます。
「下請けではない」と言って行政から離れるのも違う
この点も書いておきたいところです。
「基幹は行政の下請けではない」という言葉だけが強くなると、「だったら行政とは距離を置けばいい」「行政に頼らずに自分たちで進めていけば良い」という方向に行ってしまうこともありますが、それも違うと思っています。(そもそも福祉制度自体が行政から支給決定され、加算という形で報酬が支払われるものなので難しいのです)
基幹の仕事には行政との連携が必要です。
行政が持っている情報や権限が必要になる場面もありますし、地域だけでは解決できないことも沢山あります。だから、行政と対立することが基幹の独立性ではありません。
とは言え、行政から言われたことをそのまま地域に下ろすことが連携でもありません。
この、「中間管理職」のような立ち位置にいるのが、基幹の難しいところなのかもしれません。
大事なのは「どちら側か」ではない
行政側なのか、地域(支援者)側なのか。時々そんな話になる時があります。ただ、基幹の仕事をしていると、この二択では整理できないことが多く出てきます。
地域の相談支援専門員から話を聞く。利用者や家族から相談を受ける。行政とも話をするし、福祉サービス事業所とも話をする。必要なら医療や教育・療育、地域の人とも連携します。
その中で、「この地域で何が必要なのか」「この地域には何が足りないのか」を考える。それが基幹の求められている立ち位置ではないかと思っています。
まとめ
基幹相談支援センターと行政は、かなり近い関係にあります。行政から委託を受けて行っている仕事もあります。だから、行政との関係を綺麗に切り離して基幹の仕事を考えることはできません。
一方で、「行政から言われたことを実行する機関」というだけでもなく、地域の相談支援専門員を支えつつ、地域で起きている課題を拾いながら関係機関につなぐ。そして、その課題を行政も含めた地域の取り組みに入れられるように挙げていく。
厚生労働省が基幹を「地域における相談支援の中核的な役割を担う機関」と位置づけている意味は、ここに集約されていると思っています。
行政の下なのか、行政とは別なのか。ということではなく、行政にも、基幹にも、地域の相談支援事業所にもそれぞれの役割があり、各々が持っているものを出し合いながら地域の相談支援を一緒に作る。
行政と基幹相談支援センターとの関係は、これに尽きるのではないかというのが筆者の持論です。皆さんはいかがでしょうか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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